北海道の最北を走る宗谷本線。稚内〜音威子府間は、日本でも屈指のローカル線区間として知られています。
本記事では、
・駅の一覧と現状
・2026年時点(一部2024年夏)の現地の様子
をもとに、駅の状況や存続可能性を整理していきます。
音威子府~稚内間の駅の営業状況・2026年の訪問状況リスト
2026年は勇知・下沼・芦川・下沼・上幌延、安牛・糠南駅に訪問しました。
また抜海・雄信内駅については2024年7月訪問時の様子をここで記載します。
なお、紋穂内駅や歌内駅、問寒別駅、幌延駅については、2016年に通過した際の駅舎の写真を本ブログの記事「宗谷線 旭川駅発稚内行き各駅停車 in2016」に所蔵しています。よろしければご確認ください。
| No. | 駅名 | 状況(訪問時期) | 廃止時期(廃止の場合) |
|---|---|---|---|
| 1 | 稚内 | 営業中 (未訪問) | |
| 2 | 南稚内 | 営業中 (未訪問) | |
| 3 | 抜海 | 廃止(2024.7) | 2025年 |
| 4 | 勇知 | 営業中 (2026.5) | |
| 5 | 兜沼 | 営業中 (2026.5) | |
| 6 | 徳満 | 廃止(未訪問) | 2021年 |
| 7 | 芦川 | 廃止(2026.5) | 2001年 |
| 8 | 豊富 | 営業中 (未訪問) | |
| 9 | 下沼 | 営業中 (2026.5) | |
| 10 | 南下沼 | 廃止(未訪問) | 2006年 |
| 11 | 幌延 | 営業中 (2026.5) | |
| 12 | 上幌延 | 廃止(2026.5) | 2021年 |
| 13 | 南幌延 | 廃止(未訪問) | 2025年 |
| 14 | 安牛 | 廃止(2026.5) | 2021年 |
| 15 | 雄信内 | 廃止(2024.7) | 2025年 |
| 16 | 上雄信内 | 廃止(未訪問) | 2001年 |
| 17 | 糠南 | 営業中 (2026.5) | |
| 18 | 問寒別 | 営業中 (未訪問) | |
| 19 | 歌内 | 廃止(2016.12) | 2022年 |
| 20 | 下中川 | 廃止(未訪問) | 2001年 |
| 21 | 天塩中川 | 営業中(2016.12) | |
| 22 | 琴平 | 廃止(未訪問) | 1990年 |
| 23 | 佐久 | 営業中 (未訪問) | |
| 24 | 筬島 | 営業中 (未訪問) | |
| 25 | 音威子府 | 営業中 (2026.5) |
前提としてー2026年、宗谷本線の存続問題は本格的な議論が始まろうとしている
鉄道好きの方であればご存知かと思いますが、2026年春現在、宗谷本線は「どう存続させるか」議論を始める段階にあります。
2016年11月に、維持方策を協議したいとJR北海道から申し出があった
もともと、JR北海道は2016年11月に「当社単独では維持することが困難な線区について」を公表していました。その中で、路線を廃止させ別モードへ転換しようとする3路線と、なんとかして鉄道路線を持続させようとする8路線を提示しており、宗谷本線は後者の「なんとかして鉄道路線を持続させようとする8路線」でした。
2026年4月15日、改めて「上下分離方式」での存続がJR北海道から提案された
JR北海道は2026年4月中までに、前者の3路線について別モードへの転換を完了させました。そして、いよいよ8路線を維持させる方法を検討する段階に至りました。その1段階目として、2026年4月15日に「自治体に設備運営を担ってもらい、JRが運行を担う、事業の上下分離方式での存続」が、JR側から提案されたのです。
※なお、2016年11月の公表時にも、JR北海道はこの上下分離方式を提案していましたが、自治体の反発もあり議論が止まっている状況でした。
存続する可能性は低くないものの、路線の存廃について、先行き不透明であることには変わらない状況です。また、この間にも幾つかの駅が利用状況低迷により廃止されてきました。今回はそのような駅にも訪問し、現況を記録してきました。
抜海駅(2025年7月・2026年5月訪問)
駅の状況
廃止前は改築されながらも、開業当時からの木造駅舎がありました。入口側は特に改装が目立っており、鎧張りの造りが一部だけしか見えていない状況でした。





対照的に反対側はほぼ全面が鎧張りとして残っており、昔ながらの姿をたたえていました。



廃止の背景
JR北海道が公表している「線区別のご利用状況」によると、2020~2024年において、1日あたりの平均利用者数は2.8人となっており、兜沼駅や勇知駅よりも多くなっています。それでも廃止された理由としては利用者が想定されないことが考えられます。市街地のある抜海港からは2キロ以上離れており、アクセスは良くありません。駅稚内中心街への道のりも10kmほどで悪くない一方で、市街地からのアクセスが悪く、維持する意義が薄かったことが挙げられます。
実際に稚内市議会では、生活利用が殆ど見られない、難しいという観点から廃止を決定した旨の発言が、地域公共交通担当部局の説明として示されていました。
2026年時点では駅舎が解体された状態になっていました。

駅の入口には百周年記念碑があり、道道510号線が駅前でカーブすることからも、自家用車であればわかりやすい場所に位置しています。
勇知駅
駅の状況
表面を補強された車掌室駅舎となっています。

手前に旧駅舎時代の基礎が残っています。


2025年の抜海駅廃止に伴い、下り方面の隣駅部分に「みなみわっかない」のプレートが、貼り付けれられていました。

千羽鶴と「今日も頑張れ 宗谷本線」のポスターがありました。どうやら不憫キャラのようです。これは可愛いですね。千羽鶴があるのはこの路線が難病に侵されているかのようで、捉えようが難しい印象を持ちました。

駅の椅子には座布団と「ゆうち」とかかれた布が被せられていました。この駅をサポートする方々の、心遣いが満ちているようです。

存続の可能性
比較的高いように思われます。駅前に診療所があり、少し歩けば郵便局もありました。周辺駅から勇知駅へのアクセスがあるのかは本数的に怪しいですが、兜沼駅などからの通院や稚内・豊富市街地への外出手段として、利用することも出来なくはありません。JR北海道が公表している「線区別のご利用状況」によると、2020~2024年において、1日あたりの平均利用者数は2.2人となっています。
兜沼駅
駅の状況
昭和63年築の独自の駅舎を持っています。また行き違いが出来る上に引込線もあるなど、音威子府以北の駅としては充実しています。


オートキャンプ場があり、近道の案内がありました。1番線ホームのところから抜け道に入るというお得な情報ですが…


ここがその近道です。…通るには勇気がいるかもしれませんね。

駅からも兜沼を見ることが出来ます。
存続の可能性
こちらも維持が見込まれそうです。オートキャンプ場までのアクセスは600m程で、徒歩でのアクセスは現実的なものです。また、兜沼市街の外縁に位置していることから、便さえ合えば日常使いも出来そうです。JR北海道が公表している「線区別のご利用状況」によると、2020~2024年において、1日あたりの平均利用者数は1.8人と勇知駅と同程度です。
芦川駅
駅の状況
2001年7月に廃止された駅でしたが、国道40号線から垂直に宗谷本線まで伸びている道があったので、すぐに見つけることが出来ました。

芦川会館が道中にあり、これも目印になります。会館自体はメーターもついており、管理されているようでした。とはいえ、普段ここを利用している人は、ここらへんに住んでいない様に思えます。廃止されてから四半世紀が経ちますが、ホームのコンクリート跡を窺う事ができました。


下沼駅
駅の状況
下沼駅は駅前が大きく広がっていました。車掌車改造駅舎ですが、キャラクターの絵がくっついています。


反対面から見ると、本人のお顔がありました。傷がついているところは夕張市にいたマスコットキャラクター、「夕張夫妻」を思い出します。彼らは継ぎ接ぎの服を着ており、愛される気があったのかはよくわかりませんが、下沼駅舎の方がちょっと愛嬌を感じます。笑顔のイラストも入っているのが大きいですね。

存続の可能性
危ういと想定されます。JR北海道が公表している「線区別のご利用状況」によると、2020~2024年において、1日あたりの平均利用者数は0.2人と、2025年に廃止された南幌延駅と同程度となっています。幌延町公式ウェブサイトによれば、「サロベツ湿原等観光資源の玄関口として活用度が高いこと」を理由として自治体維持管理を行うことと決めた、とあります。このように存続の意義は明記されている駅にはなります。
但し玄関口としては、不十分です。原野を展望するための名山台展望公園から1km、パンケ沼からは2km程の道のりです。これだけの道のりがある中で、電動スクーターの整備などの観光の動線を整備が進んでいない状況です。個人的には幌延町がどこまで頑張れるかが気がかりな駅の1つでした。

上幌延駅
駅の状況
上幌延駅は現役時と同じ場所に駅舎が残っていました。「上幌延駅」の文字が読み取れます。

また、駅舎自体も施錠されていませんでした。駅跡ノートもあり、訪問を拒絶しているわけではなさそうです。

「今日も頑張れ 宗谷本線」ポスターも貼ってありました。廃駅でありますが、まだまだ宗谷本線チームの一員としてみなされているようにも思えます。

反対側の状態はかなりきれいでした。

このタイミングで列車も来ていたので1枚撮りました。スマホの調子が悪く、完全なピンボケになっています。
安牛駅
駅の状況
安牛駅は駅前から降りたところの広場に駅舎跡が設置されていました。

これは駅があった部分から見下ろす形で撮影したものですが、一番塗装が剥がれているようにも見えます。最終更新が4.30の前の駅跡ノート更新が2025年となっており、他の駅と比べても際立って訪問が少ないように思えます。

なお、反対側の状態は比較的綺麗でした。
廃止理由
上幌延駅・安牛駅については幌延町から明確に廃止理由が述べられており、「構造上維持費が高価であること」、「中間駅となる南幌延駅が近くにあり、そちらの利用が可能であること」です。但し、南幌延駅も2025年に廃止となっています。周辺に集落が殆ど残っておらず、抜海駅と同様に生活利用の乏しいことが本音の理由と考えられます。なお、南幌延駅が廃止に至った直接的な理由としては、老朽化したホーム土台の修繕費に3~400万円程度がかかると判ったことが挙げられるようです。(以下2つのリンクのうち、下が修繕費について町議会で議論された際の記録になります。)

https://www.town.horonobe.lg.jp/www4/section/gikai/le009f0000008a13-att/le009f000001qb0z.pdf
雄信内駅
駅の状況

雄信内駅は現役時代、抜海駅と並び貴重な木造駅舎が残っていました。

ここを最寄り駅として暮らしていた方(財務次官)のメモが留萌駅現役時に残っていました。駅舎改築後間もない頃であり、『幌延町史』(1974年)では地域に200人程住んでいたことがわかります。
こちらの駅舎は廃止(信号場化)後に解体され、当時の面影を拝むことは出来ません。

廃止理由(調査中)
2021年の安牛・上幌延駅などの廃止が決定した際には、町として駅を残す方針でした。その理由は「宗谷本線の歴史を伝える国鉄型木造駅舎の希少性について考究が必要なこと」でした。
南幌延駅と同じタイミングで廃止が決まった当駅ですが、理由も同じで修繕費のカバーが出来なかったのではないかと考えられます。こちらは現在調査中ですので、分かり次第記載します。
糠南駅
駅の状況
板張りのホームと倉庫を使った待合室で出来た、簡易的な駅です。

簡易的な駅ではありますが、待合室内は十分に雨風を凌げるようになっています。一応座れるスペースもあり、待合機能を十分に有しています。


存続の可能性
やや危ういと想定されます。問寒別市街地にある問寒別駅からは2km程しか離れておりませんが、駅前に建物が全くありません。1日の平均利用者数は驚異の0.0人となっており、通常ではあっという間に廃止になるような駅だったと考えられます。但しこの駅では毎年、有志がクリスマスパーティーを開催しています。このクリパがある故に、暫くは生き永らえるように思えます。

宗谷本線(稚内~音威子府間)で廃止が危ぶまれる駅
訪問していない駅もありますが、2026年の現時点で廃止が怪しい(と勝手に思った)のは以下2駅でした。
・下沼駅
・筬島駅
理由は「社会的意義が強く求められていない」というところにあります。
ここでいう社会的意義は「1.そもそも利用者数が少ない」「2.生活交通や観光交通として一定量の需要がない」「3.(特別な)拠点性も見出されない」という3点に別れます。
まず、1日の平均利用者数が少ないと、廃止の検討対象になることは大原則です。2026年以前二廃止された南幌延・雄信内はいずれも1人未満/1日あたりでした。そういう意味で言えば下沼・糠南・佐久・筬島は要件未満ということになります。
さて、この中のすべてが危機に瀕しているのでしょうか。大凡そうだと言えますが、「生活や観光交通として役割を果たしているか」がもう1つ大きな条件になってくると考えます。
典型的な例は抜海駅です。1日2.8人/日だった抜海駅が廃止となったのは、『生活交通として役立っていないから』でした。とすると、駅前に集落が残っている佐久は除外されるでしょう。
なお、下沼駅は「サロベツ原野の玄関口」とされていますが、先述の通り「パンケ沼まで2km」「名山台展望公園までも1km+上り坂」とアクセスが悪く、乗り継ぎ手段も整備されていないことから、(独断と偏見で)役割を果たせていない、と判断しました。
残るのはランキングに載せた下沼・糠南・筬島になります。眼の前に集落が無く、生活交通や観光交通のアクセスに乏しい3駅は、どれも危険水域の駅だと考えます。この中で唯一拠点性を発揮しているのは、クリパをやっている糠南駅だと思います。2021年以降にも雄信内よりも利用者数が少なく、何もない駅が存続しているのは、このクリパという町民と訪問客が交流する機会をはたしており、他の場所での替えが利かないことが挙げられそうです。
なお、筬島駅には、歩いて170mほどの場所に「エコミュージアムセンターおさしま」と呼ばれるミュージアムがあります。ここは平成元年まで活動した彫刻家「砂澤ビッキ」さんのアトリエを基にしたミュージアムです。音威子府からのアクセスも可能で、9時台の稚内行で来て、13時前の名寄行きで帰る事ができる(3時間半は長い気もしますが)ので、強いて言えば下沼駅よりは存続可能性があるように思えます。
以上の点から、「誰かが近くに住んでて使うわけではない、これら2駅」は、早めに見ておきたい駅だと考えました。
下沼駅はかわいい駅でしたので、なんとか利用者として降りてみたいのですが、1日3.5往復で1-2時間滞在して移動、というダイヤでもないので、厳しい気持ちになってしまいます。ぜひ、2次交通で幌延市街地に戻れるようにするなど、観光交通としての整備と発信を期待したいと思います。

おまけ・音威子府駅そば復活営業

音威子府駅は名物の音威子府駅そばが再販することから、行列を作っていました。

連休中は5/2~5/5の間で営業するという連絡もあり、12時過ぎに到着したものの、食事までに30分程時間がかかりました。お土産のそばも飛ぶように売れており、大量買い対策で殆ど棚に出されていませんでした。ただしほぼ全員が自家用車で訪問しており、滞在中の1時間で券売機を利用したのは、筆者の同行者1人だけでした。

このことを見越してか、動線も券売機の眼の前を通るように整備されていました。券売機の「いらっしゃいませ、お求めの切符をお選びください」という声を聞いていると物悲しい気持ちと、レンタカーで来ている自分が恥ずかしくなりました…。また復活があると思われますので、その際はぜひ列車でお越しいただければと思います。

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